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【第5回受賞】多様なロールモデルを大学に

弘前大学大学院医学研究科整形外科 医員 黒瀬 理恵

30年程前の話になるが,子供の時分病気した際に母が連れて行ってくれた小児科医院の女性の先生の存在が大きい.その先生は24時間医院を開いていて,夜中スタッフがいなければ自ら受付係をし診察して薬の処方もしてくれた.土日祝日も休まず毎日のことであった.私が医学部を受験したのも心のどこかにこの偉大な先生の存在があったからだと思っている.少し前は女性でもこの先生のように男性に負けないくらい時間無制限で働く先生たちが多かった印象がある.しかしプライベートはというと,私の周りを見渡せばそのような先生たちにはお子さんは少なかった.一方で,最近の若い女性医師は女医支援対策の発展によって仕事を続けながら(セーブしながら)結婚,出産,育児は当たり前ととらえている先生も多いように見受けられる.しかし現状では女性医師のロールモデルがまだまだ少なく,仕事と育児の両立に行き詰まり本来想定していた仕事から離れていく人も多いことは認識されていないように思われる.そして3人の子供を育てる私も今その狭間にいる.

平成24年厚労省による調査では,女性医師の割合は皮膚科,眼科が約40%と多く,私の所属する整形外科は約4%で最も少ない.医学部を卒業後,夫の転勤のために現在まで3つの整形外科の医局を経験してきたが,どの医局においても子育てしながら仕事を続けるという前例がなかった.多様なロールモデルがなかった故,教授や医局長との勤務条件の交渉や職場周囲の理解,信頼を得ることが,両立させるための最重要事項であった.近年の女性医師支援についての意識の高まりもあり,妊娠や育児中の時間外勤務や当直の免除についてはサポートされてきているように思われ,この点は感謝しなければならない.しかし,キャリアアップに関してはどうだろうか。

キャリアアップには学会発表や論文といった研究業績も必要であり,さらに外科医であれば手術といった特殊技術も要求される.保育サポートだけに終わらず,キャリアサポートをマンパワーのある大学ならばこそ率先して実行してほしいと願う.その根底には,我が子を大切に育て,そして自分自身のキャリアも実現させたいという女性医師としての切実な,痛切な願いがあリ,それは多くの女性医師の悲願であろう.女性医師側もキャリアを諦めては社会は変わらない.社会全体で将来の日本を担う子供を大切に育てかつ個々人のキャリアパスを考えてくれる,そのような社会を実現させるために,女性医師側もキャリアを諦めず,できる範囲で現場にしがみつき,おのおのの多様なロールモデルを作っていくことが大事だと思う.男女の区別なく優秀なヒューマンリソースを育てそして真に平等に評価される社会になってもらいたいと心から願う。

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