トップページ
メール問い合わせ

〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-8-7 青山宮野ビル3F





2007.05.19 
第27回 平成18年度受賞 大屋敷 純子  

「自分の軸」 

東京医科大学 難病治療研究センター
教授 大屋敷 純子


 東京医科大学 難病治療研究センターは平成10年度に私立大学学術研究高度化推進事業「ハイテク・リサーチ・センター整備事業」に選定され、大学の研究の基盤整備として設立された。中嶋宏(元WHO事務局長)を初代所長として迎え、以後、免疫関連疾患、神経難病、悪性腫瘍などの難病の発症機序、病態解明、および新規治療法の開発などを行っている。大学における各講座が縦糸とすると私たちの部門は分野横断的な横糸のようなもので、現在は善本隆之教授が基礎研究部門、私が臨床研究部門を担当し、両部門が密に連携して研究と教育に携わっている(URL: http://www.tokyo-med.ac.jp/d-idrc/ )。私の仕事の主たる部分は臨床医と研究者の橋渡し的作業で、医療を取り巻く状況が変化する中、診療に疲弊した臨床医が医学研究に向き合える場を提供し、physician scientistの育成を通じて、「私立医科大学における研究の灯火を絶やさないようにしている」というのが現状である。
 そもそも私は研究者になるべくしてなったのではなく、開業医をしている実家を継ぐべく医科大学に入った。いわゆる世襲組で、根性も体力もなかったが、選んだ道は血液内科で、留学中の2年半を除くと血液内科で働いた約20年間のうちほとんどは血液疾患・造血器腫瘍の診療・研究・教育の3つのワラジをはき、それに家事育児がついて回った。血液内科を退職したのは、教室の教授選にまつわる諸事情がわずらわしかったことと、両親の介護に直面したためである。そうして、平成9年以後、エフォートの中心は研究・教育となり、東京医科歯科大学 難治疾患研究所での非常勤職5年を経て、平成14年、母校、東京医科大学 難病治療研究センターの専任講師となった。平成18年度に日本女医会学術研究助成を賜った「造血器腫瘍におけるJAK2 V617F変異の分子病態解明と分子標的療法の開発」はその後の私の仕事の集大成で、臨床上の問題点・疑問点から出発した研究である(Int J Hematol. 2008, 87(4):446-8, Jpn J Clin Oncol. 2009, in press, doi:10.1093/jjco/hyp048)。私が開発したこの遺伝子変異解析手法は平成20年度より大手の検査会社での受託解析が始まり、血液疾患日常診療にも用いられるようになっている。
 このように平成18年度日本女医会学術研究助成を受賞したことは、私にとって「進むべき道」が見えてきた記念すべき出来事であった。すなわち、血液内科医を断念した自分の過去を否定するのではなく、あるがままに自分のすべてを受け入れ、研究者としての自分、血液学・腫瘍学を学ぶものとしての自分を再認識したのであった。以後、私は「古壷新酒」のごとく、日々新しい自分を感じている。そして本年1月より母校出身で初めての女性教授に昇任した。面白いことに私が血液内科医時代に多感な時期を過ごした長女は臨床医に、研究者時代に進路を決定した次女は教員となった。考えてみるとえんどう豆と同じである。ただ一つ思うことは、卒業したとき血液内科を選択し、以後ずっと血液学・腫瘍学を軸として勉強してきたことによって、回り続ける独楽のように自分自身の軸がブレることなく研究を続けてこられたということである。専門性の高い分野はとかく敬遠されがちであるが、専門性こそが継続の鍵であるような気がする。加えて、今日まで私を支えてくれた先輩・同僚諸氏、家族、研究スタッフには感謝の言葉もない。最後に、日本女医会小田泰子会長をはじめ今日までお力添えいただきました諸先生方に深謝いたします。

キーワード
Physician scientist、血液・腫瘍学、遺伝子変異解析


〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-8-7 青山宮野ビル3F TEL:03-3498-0571 FAX:03-3498-8769